メッシュインサート成形の設計|密着強度と材質選定の実務

メッシュインサート成形の設計|密着強度と材質選定の実務

メッシュを樹脂の枠にどう固定するか——フィルター部品の設計で、最後まで残りやすい課題です。接着では剥がれが心配、溶着では熱で網が変形する、圧入では組み立ての手間が増える。どの方法にも一長一短があります。

この課題への答えのひとつが、メッシュインサート成形です。メッシュを金型にセットした状態で樹脂を射出し、網と枠を一体の部品として成形します。本記事では、この工法の品質を決める密着強度の考え方、メッシュと樹脂の選び方、コストを左右する工程設計までを、日々インサート成形を手がける現場の視点で解説します。

フィルターや通気部品の仕様でお悩みでしたら、お問い合わせフォームから図面を添えてご相談ください。

メッシュインサート成形とは|網と樹脂枠を一体で作る工法

メッシュを樹脂と一体成形したフィルター部品が並んだ状態
メッシュを樹脂ホルダーと一体成形したフィルター部品(実際の製品をもとに作成したイメージ)

メッシュインサート成形は、金型の内部にメッシュをセットしてから樹脂を射出し、網と樹脂枠が一体になった部品を作る加工方法です。フィルター、ストレーナー、通気部品、シールド部品などに使われます。

組み立て工程そのものをなくせる

メッシュ部品を作る方法は、大きく2通りに分かれます。網と枠を別々に作って後から固定する方法と、成形と同時に一体化する方法です。

前者は工程が分かれるぶん、部品点数と組み立て時間が増えます。加えて、固定の仕方によっては使用中に網がずれる、剥がれるといったリスクが残ります。一体成形は、この組み立て工程自体を省ける点が最大の利点です。

接着・溶着・圧入との違い

網を枠に固定する代表的な方法を比較すると、次のようになります。

固定方法 工程数 網のずれ・剥がれ 向いている場面
インサート成形 成形と同時(1工程) 樹脂が網目に回り込み固定される 量産、繰り返し力がかかる部品
接着 枠成形+接着(2工程) 接着剤の劣化・薬品の影響を受ける 少量、試作
溶着 枠成形+溶着(2工程) 熱で網が変形・目詰まりする場合がある 樹脂メッシュ同士の接合
圧入・かしめ 枠成形+組立(2工程) 寸法公差の管理が必要 網の交換を想定する製品

工法そのものの仕様や対応スペックはメッシュインサート成形の技術紹介ページにまとめています。

品質の決め手はメッシュと樹脂の密着強度

インサート成形の良し悪しは、見た目ではほとんど判断できません。実際に品質を左右するのは、網と樹脂がどれだけ強く一体化しているかです。

「何kgで剥がれるか」で確認する

成形後の製品は、メッシュ部分を押して何kgの力で剥がれるかを確認します。使用時にかかる力に対して十分な余裕があるかを、この数値で判断します。

フィルターは、流体の圧力を網が受け止める部品です。目開きが細かいほど圧力損失は大きくなり、網にかかる力も増えます。つまり捕集性能を上げるほど、密着強度の重要度も上がる関係にあります。

ハイメッシュほど密着が難しくなる

密着の仕組みは、溶けた樹脂が網目に回り込んで固まることにあります。したがって網目が細かい(ハイメッシュ)ほど、樹脂が入り込む隙間が小さくなり、密着は確保しにくくなります。

過去には、樹脂製ハイメッシュを使ったエアフィルターで「樹脂との密着が悪い」という理由から他社で対応が難しかった案件がありました。この案件では、インサート前にメッシュ側へ前処理を施すことで密着性を確保し、約1,000個の量産まで安定させています。

細かいメッシュを使いたい場合ほど、成形条件だけでなくメッシュ側の準備を含めて検討する必要があります。メッシュ単体の加工についてはメッシュ加工販売のページで紹介しています。

メッシュと樹脂の選び方

ご相談をいただく段階で、図面に網目の大きさ(メッシュ番手)まで指定されているケースがほとんどです。そのうえで実際に詰めることになるのは、番手の妥当性と材質のグレードです。

メッシュ材質は使用環境で決まる

メッシュ材質 特徴 向いている用途
ポリエステル(PET) 寸法安定性が高い汎用樹脂メッシュ 一般的なろ過、ふるい分け
ポリプロピレン(PP) 耐薬品性が高く軽量 薬液・洗浄用途、水まわり
ナイロン(PA) 耐摩耗性・耐衝撃性に優れる 粉体、摩耗を伴う環境
ステンレス(SUS304・SUS316) 耐熱性・強度が高い 高温、高圧、機器保護

樹脂メッシュと金属メッシュのどちらを選ぶかは、流体の種類・温度・薬品との相性で決まります。ストレーナー用途を含めたメッシュ選定の考え方は、ストレーナーのメッシュサイズと選び方で詳しく解説しています。

同じPP樹脂でも硬さのグレードが違う

材質名が同じでも、性質が一種類とは限りません。PPには硬めのグレードと柔らかいグレードがあり、どちらを選ぶかで仕上がりも扱いやすさも変わります。

枠にしっかり保持させたい場合や、洗浄で繰り返し力がかかる場合や複雑な形状に沿わせたい場合などが基本的な考え方です。図面に「PP・メッシュ○○メッシュ」とだけ書かれている場合、この使い分けは決まっていないことが多いため、用途をお聞きしたうえでご提案する部分になります。

樹脂側は成形性と使用条件で選ぶ

枠となる樹脂は、PP・POM・PA(ナイロン)・PBT・ABS・PC・PPSなどから選びます。メッシュと樹脂を同じ材質でそろえると、熱膨張の差が小さくなり密着が安定しやすいという考え方もあります。対応材質の一覧は対応スペック・素材ページに掲載しています。

コストを左右する「抜きながら成形する」工程設計

同じ一体成形でも、メッシュをどの状態で金型に入れるかによって、手間もコストも変わります。

小さく抜いてから入れるか、大判のまま入れるか

ひとつは、あらかじめ製品サイズに合わせて小さく抜いたメッシュを、1枚ずつ金型にセットする方法です。確実ではありますが、小さな網を扱う手間と、位置決めの精度が課題になります。

もうひとつが、大きなメッシュシートのまま金型にセットし、プレス機能を組み込んだ成形金型で「抜きながら成形する」方法です。メッシュの裁断と樹脂成形が1工程にまとまるため、小さく抜く工程が不要になり、位置ずれや密着不良も抑えられます。

数量が増えるほど、この工程設計の差はコストに直結します。実際の適用例は医療用フィルターのメッシュインサート成形の加工事例でご覧いただけます。

小ロットと量産、どちらにも対応できる理由

縦型・横型の成形機を使い分ける

インサート成形では、メッシュを金型にセットしてから型を閉じます。横型成形機では、セットしたメッシュが自重でずれてしまう形状もあります。そうした場合は縦型成形機を使い、重力方向を味方にしてセットします。両方の成形機を持つことで、形状による制約を減らしています。設備の詳細は設備情報ページをご覧ください。

100個規模のご依頼にも対応しています

インサート成形は金型を使う工法のため、量産向きと見られがちです。実際、「ロットが少なすぎる」という理由で断られたというご相談も届きます。

以前お受けした事例では、リサイクル業者向けの洗浄用ザル状部品(PPメッシュとPP樹脂の組み合わせ)を約100個で製作しました。小ロットでは単価が上がる点を先にお伝えしたうえで、少量でもお引き受けしています。数量が少ないという理由だけで諦める必要はありません。

メッシュを使った部品でお困りの内容がありましたら、お問い合わせからご相談ください。内容にもよりますが、他社で難しいと言われた案件のご相談も承っています。

依頼時に決まっているとよい3つの情報

メッシュインサート成形品のメッシュ部分の拡大
メッシュ部の拡大。目開きと密着強度は相反しやすいため、用途とセットで検討する(実際の製品をもとに作成したイメージ)

見積り・試作をスムーズに進めるために、次の3点を整理しておくと話が早く進みます。

  • メッシュの番手(または捕集したい異物の大きさ): 番手が未定でも、何を止めたいかが決まっていれば逆算できます
  • 使用環境: 流体の種類・温度・薬品の有無。メッシュと樹脂の材質選定はここで決まります
  • 使用時にかかる力: 圧力や押し込みの想定。密着強度の目標値を決める根拠になります

形状の図面がまだ固まっていない段階でも、この3点があれば工法の可否は判断できます。そのほかの疑問はよくある質問ページにもまとめています。

メッシュインサート成形に関するよくあるご質問

Q1. どのくらいの数量から依頼できますか?

金型がある場合は試作数個から対応できます。新規に金型を製作する場合は、形状と数量をお聞きしたうえでご相談させていただきます。100個規模の小ロットでの実績もあります。

Q2. メッシュと樹脂の密着はどのように確認していますか?

成形後の製品でメッシュ部を押し、何kgの力で剥がれるかを確認しています。要求される強度は使用条件によって変わりますので、想定される圧力や力をお知らせいただければ、それを基準に評価します。

Q3. 細かいメッシュでも一体成形できますか?

番手が細かいほど樹脂が回り込む隙間が減り、密着の確保が難しくなります。ただし、メッシュ側の前処理で対応できた実績もあります。目開きの希望を伺ったうえで、加工方法を含めて検討します。

Q4. 金属メッシュと樹脂メッシュのどちらを選ぶべきですか?

使用環境で決まります。高温・高圧や機器保護の用途では金属メッシュ、薬液や洗浄用途では耐薬品性のある樹脂メッシュが選ばれる傾向があります。判断に迷う場合は用途をお聞かせください。

Q5. メッシュの加工だけを依頼することはできますか?

可能です。金属メッシュのロール加工・抜き加工、樹脂メッシュの溶着加工・抜き加工にも対応しています。メッシュ加工からインサート成形まで一括してお任せいただくこともできます。

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