ハーフエッチングとは|深さの目安・用途と設計の注意点

ハーフエッチングとは|深さの目安・用途と設計の注意点

板厚0.2mmのステンレスに、深さ0.1mmの文字を彫る。板を貫通させずに途中で溶かすのを止めるこの加工が、ハーフエッチングです。銘板の文字、定規の目盛り、記念品のロゴ、曲げ加工の溝まで、金属板に「彫る」表現の多くはハーフエッチングで作られています。

本記事では、ハーフエッチングの仕組みと用途、深さの目安、深く彫るときの注意点を、設計者・購買担当の方向けに解説します。当社で実際に製作した記念品・しおり・目盛板の3点について、材質・板厚・彫りの深さも紹介します。

図柄や板厚が決まっていない段階でも、お問い合わせフォームからご相談いただけます。ラフなデザインと用途をお知らせいただければ、彫りの深さや板厚の考え方からお伝えします。

ハーフエッチングとは|板を貫通させずに途中で止めるエッチング

ハーフエッチングは、フォトエッチング(薬品で金属を溶かして形状を作る加工法)のうち、板を貫通させずに途中の深さで止める加工です。金属板に文字・目盛り・イラストなどの図柄を彫り込むときに使います。仕組みの全体像はフォトエッチングとはで詳しく解説しています。

貫通させる「抜き」との違い

外形や穴を作る通常のエッチング(抜き)は、板の表と裏の両方から同時に溶かし、中央でつなげて貫通させます。これに対しハーフエッチングは、溶かしたくない面をレジスト(薬品から金属を守る膜)で全面覆い、片面からだけ溶かします。決めた深さに達したところで加工を止めるため、板の途中に溝やくぼみが残ります。

断面図。両面から溶かして貫通させる抜きと、片面だけ途中まで溶かすハーフエッチング、曲げ位置に溝を入れるハーフエッチングの比較
図1:抜きとハーフエッチングの違い。ハーフエッチングは片面だけを途中まで溶かす

抜きとハーフエッチングは同じ工程で作れる

抜きとハーフエッチングは、同じ板の中で同時に加工できます。表面の図柄はハーフエッチングで彫り、外形は両面から溶かして抜く、という組み合わせが代表的です。表と裏で別々の版下データを用意することで、どこを貫通させ、どこを途中で止めるかを1枚の板の中で作り分けます。

ハーフエッチングの主な用途

ハーフエッチングの用途は、大きく「図柄を彫る」と「曲げやすくする」の2つに分かれます。当社でご相談の多い用途を整理すると、次のようになります。

用途 彫るもの 製品の例
文字・ロゴの表示 社名・型式・ロゴ 機械や電器機器の銘板、操作パネル
目盛り 1/10mm刻みなどの細い線 目盛板、スケール、定規
意匠・装飾 イラスト・模様・記念の文字 記念品、しおり、ノベルティ
曲げ加工の補助 曲げる位置の溝 曲げて立体にする薄板部品

銘板では、彫った溝に塗料を流し込んで文字に色を付けます。文字そのものが彫り込まれているため、表面の色が摩耗しても文字の形は残ります。銘板の材質や仕上げの選び方はネームプレート・シルク印刷の技術紹介ページをご覧ください。

曲げ位置は片面からのハーフエッチングがほとんど

曲げて使う薄板部品では、曲げる線に沿ってハーフエッチングの溝を入れておくと、狙った位置で曲げやすくなります。当社の製作では、曲げ位置は片面からのハーフエッチングがほとんどです。曲げ位置を片面からハーフエッチングし、外形は両面からエッチングして抜く、という形で1枚の板に同時に作り込むケースが多くあります。

ハーフエッチングの深さの目安は0.1〜0.2mm程度

ハーフエッチングの深さは、一般的に0.1〜0.2mm程度です。ただし深さは「深いほど良い」ものではなく、図柄の細かさと板厚とのバランスで決めます。当社で製作した3点の深さを並べると、用途によって0.02mmから0.1mmまで幅があることがわかります。

製品 材質・板厚 彫りの深さ 外形の加工
イベント記念品のプレート SUS316 鏡面材・t0.5mm 0.02mm程度 プレス(外形・曲げ)
目盛板(機械部品) SUS304 2B(ブラストで艶消し) 0.05mm程度 エッチングで抜き
犬型のしおり SUS304CSP H材・t0.2mm 0.1mm程度 エッチングで抜き

鏡面材の記念品は、浅く彫って鏡面とのコントラストで文字を見せています。一方、しおりは板厚0.2mmに対して0.1mm程度と、板厚の半分ほどまで彫っています。同じハーフエッチングでも、何を見せたいかで深さの決め方が変わります。

深くするほど線幅・穴径が広がる

エッチングは、下に向かって溶けると同時に横方向にも溶けが進みます(サイドエッチング)。そのため深く彫るほど、溝の幅や穴の径は版下より広がります。細かい図柄ほど深くすると線が太り、線同士がつながったり、文字がつぶれたりして精度が落ちます。

細い線や小さな文字を彫る場合は、深さを抑えて線幅を保つのが基本です。反対に、色を流し込んで耐久性を持たせたい銘板の文字などは、線の太さに余裕を持たせて深めに彫ります。線幅と板厚の関係は、抜きの場合も含めてフォトエッチング図面の書き方で解説しています。

ハーフエッチングの実例3点

ここからは、当社で製作したハーフエッチングの実例を3点紹介します。いずれも材質・板厚・深さに加え、外形をどう作ったかもあわせて記載します。

イベント記念品|鏡面SUS316に深さ0.02mmで文字を彫る

鏡面ステンレスのプレートに「SUB4 42.195K」の文字をハーフエッチングした記念品
図2:SUS316鏡面材・t0.5mmのプレート。文字の深さは0.02mm程度で、外形と曲げはプレス

イベントの記念品として、約1,000個を製作したプレートです。肌に触れる場所に付ける製品のため、材質には耐食性の高いSUS316を選びました。通常、鏡面材として流通しているのはSUS304で、SUS316の鏡面材は特注品として手配しています。

文字は深さ0.02mm程度と浅く彫り、鏡面との質感の違いで読ませています。外形と曲げはプレスで加工しました。鏡面材は曲げの際にキズが付きやすいため、キズを防ぐよう曲げ型を何度か修正してから量産に入っています。エッチングとプレス・曲げを組み合わせた二次加工の考え方は、電子部品のフォトエッチングでも紹介しています。

犬型のしおり|板厚0.2mmに深さ0.1mmでロゴを彫る

ステンレス製の犬型しおりの中央部。骨の形の中にロゴがハーフエッチングで彫られている
図3:SUS304CSP H材・t0.2mmのしおり。ロゴの深さは0.1mm程度で、外形はエッチングで抜いている

トイプードルの形をした金属しおりです。材質はSUS304CSP(ばね用ステンレス鋼帯)のH材で、板厚は0.2mm。中央の骨の形の中に、深さ0.1mm程度でロゴを彫っています。外形も同じ版下からエッチングで抜いているため、ロゴと外形を1回の工程で作れます。

しおりの板厚の選び方や、ノベルティとしてのデザインの考え方は金属しおりのエッチング製作で詳しく紹介しています。

目盛板|艶消しにしてから深さ0.05mmで目盛りを彫る

機械部品として使われる、1/10mm刻みの円弧状の目盛板です。材質はSUS304の2B材で、まずブラストで表面を艶消しにし、その後に目盛りをハーフエッチングしています。深さは0.05mm程度で、外形もエッチングで抜きました。

目盛りは細い線が等間隔に並ぶため、深く彫ると線が太って隣の線とつながりやすくなります。浅めの深さに抑えることで、細かい刻みでも線の形を保っています。目盛り入りのしおりの事例はステンレスしおりのエッチング製作(目盛り・文字彫刻)でもご覧いただけます。

ハーフエッチングで注意したい3つのこと

ハーフエッチングは、抜きにはない注意点があります。いずれも深さと板厚の関係から起きるもので、設計段階で知っておくと試作のやり直しを減らせます。

1. 深いほど深さのばらつき・面の荒れが出やすい

途中で止める加工のため、深く彫るほど場所による深さのばらつきが大きくなります。また、溶かした面の荒れも出やすくなり、その程度は素材によって異なります。深さに厳しい公差が必要な場合や、彫った面の見た目を重視する場合は、材質の選定も含めてご相談ください。

2. 薄い板はハーフエッチングした側に反ることがある

板厚の薄い材料では、ハーフエッチングした面の側に板が反る場合があります。片面だけを溶かすため、表と裏で状態が変わることが原因です。彫る範囲が広い場合や、平面度が求められる部品の場合は、板厚や彫る範囲の設計を事前に検討しておくと安心です。

3. 細かい図柄は深さより線幅を優先する

前述のとおり、深くするほど線幅は広がります。文字の細さや目盛りの間隔が決まっている場合は、深さを指定する前に「その線幅で彫れる深さはどこまでか」を確認するのが確実です。当社では図面を拝見した段階で、加工できる線幅・深さを確認し、必要に応じて設計の調整をお願いすることがあります。

ハーフエッチングの深さや反りについてのご相談は、お問い合わせフォームからお気軽にどうぞ。図面やラフのデータを添えていただければ、彫れる深さの目安をお伝えします。

ハーフエッチングとシルク印刷の使い分け

金属板に文字や図柄を入れる方法には、ハーフエッチングのほかにシルク印刷もあります。当社ではどちらも社内で加工しているため、用途に合わせて使い分けをご提案しています。

項目 ハーフエッチング(+色入れ) シルク印刷
文字の残り方 文字を彫り込むため、色が剥げても形は残る 表面に印刷するため、摩耗には弱い
向いている環境 屋外・摩耗のある場所 屋内
細かい文字 かなり細かい文字まで対応しやすい 細い文字はつぶれやすく、原稿の調整が必要な場合がある
立体感 彫りの凹凸がある 平面

エッチングで彫った後にシルク印刷を重ねる看板のように、両方を組み合わせる製品もあります。社内で一貫して加工できるため、工程ごとに業者を分ける必要がありません。対応できる材質・板厚は対応スペック・素材ページに掲載しています。

ハーフエッチングを依頼するときに伝えたいこと

ハーフエッチングの見積りでは、次の情報があると確認の往復が減ります。すべてが決まっていなくても、分かる範囲でお知らせください。

  • 材質と板厚(例: SUS304・t0.2mm)
  • 彫りたい図柄のデータ(Illustrator形式、DXF・DWGなど)
  • 彫りの深さの希望(指定がなければ図柄に合わせてご提案します)
  • 外形の作り方(エッチングで抜くか、プレスで抜くか)
  • 色入れ・曲げなどの仕上げの有無
  • 数量(試作1個からご相談いただけます)

費用の決まり方はフォトエッチングの費用はどう決まる?で解説しています。これまでの製作例は加工事例一覧でご覧いただけます。

ハーフエッチングのよくあるご質問

Q1. 彫りの深さは指定できますか?

深さの希望はお伺いしますが、図柄の細かさと板厚によって彫れる深さが変わります。細かい図柄で深さを優先すると線幅が広がるため、図面を拝見したうえで、線幅と深さのバランスをご提案します。

Q2. 表と裏の両面にハーフエッチングできますか?

表と裏で別々の版下データを作るため、両面にそれぞれの図柄を彫る設計も検討できます。板厚や彫る範囲によっては反りや強度に影響するため、内容にもよりますが、まずはご相談ください。

Q3. 1個だけでも作れますか?

フォトエッチングは金型を使わないため、試作1個からご相談を承っています。記念品の約1,000個のような量産まで、数量に合わせて外形の加工方法(エッチングで抜くかプレスで抜くか)もご提案します。

Q4. 彫った文字に色を入れられますか?

彫った溝に塗料を流し込む色入れは、社内で対応しています。銘板のように文字を目立たせたい製品では、ハーフエッチングと色入れを組み合わせるのが一般的です。

関連コラム

ハーフエッチングの深さや使い分けのことなら、有限会社ソメヤにご相談ください。銘板・目盛板・記念品などの試作1個〜の製作から、色入れ・曲げ・シルク印刷まで一貫して対応します。
お問い合わせフォームはこちら/お電話でのご相談: 04-7133-0551(8:30〜17:30・土日祝定休)

Contact

まずはお気軽にご相談ください。
試作1個から対応します。

製品・加工に関するご相談、お見積りのご依頼など、お気軽にお問い合わせください。