フォトエッチング図面の書き方|見積りが早くなる4つの記載事項

フォトエッチング図面の書き方|見積りが早くなる4つの記載事項

「データーが等倍で描かれていない」——フォトエッチングの見積り現場で、最も多い間違いが発生する場面です。

本記事では、フォトエッチング(薬品で金属を溶かして形状を作る加工法)の図面・データの作り方を、設計者・調達担当の方向けに解説します。見積りに必要な4つの記載事項、エッチングならではの設計ルール、図面がない場合の依頼方法まで、日々図面を受け取る加工現場の視点でまとめました。

お手元の図面で見積りできるかすぐ知りたい方は、お問い合わせフォームから図面を添えてご相談ください。

フォトエッチングの図面・データの特徴

2次元データで完結する加工法

フォトエッチングは、平らな金属板に写真製版の技術でパターンを転写し、薬品で溶かして形状を作ります。切削のように立体を削り出す工程がないため、必要なのは外形と穴の2次元情報だけです。

3D CADモデルは不要で、2次元図面やポンチ絵(簡単な手描きスケッチ)でも製作を検討できます。工法の仕組みはフォトエッチング技術紹介ページで詳しく解説しています。

実務で多いのはDXF・DWG形式

実際にお客様からいただくデータで多いのはDXF・DWG形式(2次元CADの標準的なファイル形式)です。エッチング加工用の版下データ(フォトマスク)は2次元CADから直接作れるため、DXF・DWGでいただけると加工用データへの変換がスムーズです。

一方、PDF図面や紙図面しかない場合でも対応できます。その場合は加工側でCADデータを起こすため、寸法情報の記載がより重要になります。

エッチング図面で見積りに必要な4つの記載事項

見積りを早く正確に受け取るために、図面に次の4点を記載してください。これは見積り実務で「記載がなく確認に往復が発生しやすい」項目でもあります。

記載事項 記載例 影響する項目
材質 SUS304、SUS316L、C5210 など 材料手配・価格・薬品条件
板厚 t0.1、t0.05 など 加工限界(孔径・線幅)・価格
寸法 外形寸法・穴位置・穴径 加工可否・データ作成
公差 ±0.05mm、一般公差 など 工程設計・検査方法
エッチング図面の記載例。材質・板厚・寸法・公差の4項目を記載した図面サンプル
図1:見積りに必要な4項目を記載した図面の例。この4点が揃えば見積りは最短で進む

材質と板厚はセットで書く

エッチングは材質によって使う薬品と溶ける速度が異なり、板厚によって加工できる穴の大きさが決まります。「ステンレス」だけでなくSUS304かSUS316かまで、板厚は「t0.1」のように数値で明記してください。対応材質と板厚範囲の一覧は対応スペック・素材ページに掲載しています。

材質選定に迷う場合は、用途を書き添えていただければ提案が可能です。例えば体液や薬液に触れる部品の材質選定は、医療機器のフォトエッチング加工の解説記事で詳しく紹介しています。

図面は等倍(1:1)で描く

冒頭で触れたとおり、現場で最も確認が多いのが縮尺です。2次元CADのデータが2倍や1/2のスケールで描かれていると、加工側で等倍に戻す作業と「この寸法で正しいか」の確認往復が発生します。

CADデータは等倍で作成し、やむを得ず縮尺をかける場合は図面内に明記——ではなく、できるだけデータそのものを1:1にしてください。基準寸法を1箇所測れば検算できるため、代表寸法の数値記入も有効です。

公差は「必要なところにだけ」入れる

エッチングの寸法公差は±0.05mm〜(板厚・材質により変動)が目安です。全寸法に厳しい公差を入れると価格が上がるため、機能上重要な穴径・ピッチにだけ公差を指定し、他は一般公差とするのが費用を抑えるコツです。

エッチングならではの設計ルール

フォトエッチングには、板厚を基準にした設計の目安があります。図面を描く段階で押さえておくと、手戻りなく一度で加工可能な設計になります。

項目 目安 例(板厚0.1mmの場合)
最小孔径 板厚の150%〜170% φ0.15mm〜φ0.2
最小線幅 板厚の100%前後〜 0.1mm前後〜
寸法公差 ±0.05mm〜 板厚・材質により変動
最大加工サイズ 400mm×600mm それ以上は要相談
両面エッチングの断面図解。最小孔径は板厚の150%から、最小線幅は板厚の100%前後から
図2:エッチングの設計ルールは板厚が基準。板厚より小さい穴は加工できない

特に見落としやすいのが「穴は板厚より小さくできない」という制約です。細かい穴が必要なフィルターやメッシュでは、穴径から逆算して板厚を薄くする設計が定石です。メッシュ形状の設計はストレーナー設計のメッシュ番手・材質の選び方で詳しく解説しています。

また、微細部品では製品を帯材にどうつなぐか(つなぎ・ブリッジの設計)も品質を左右します。板厚0.1mmの端子部品の加工事例では、いただいたCADデータを加工用に補正した実例を紹介しています。

設計段階での相談は歓迎です。図面が固まる前でも、お問い合わせいただければ加工性の観点からアドバイスできます。

図面がなくても依頼できる|スケッチ・現物からの製作

「正式な図面を描く前に概算が知りたい」「現物はあるが図面がない」という相談は珍しくありません。フォトエッチングでは、次の方法でも見積り・製作が可能です。

手描きスケッチ(ポンチ絵)から

寸法・板厚・材質がわかれば、手描きのスケッチからでも見積りできます。実際の見積り実務でも、ポンチ絵に寸法が書き込まれていれば十分検討できるケースが多くあります。シム(すき間調整用の薄板)のような単純形状であれば、データがなくても寸法指定だけで製作できる場合もあります。

加工用データの作成から対応

簡単な形状であれば、加工側でCADデータの作成から対応できます。またデータをいただいた場合も、エッチング特有の補正(溶け代の補正やつなぎの追加)を加えてから版下を作るのが通常の流れです。データ作成の可否は形状の複雑さによりますので、内容にもよりますが、まずはご相談ください。

ロット・納期の目安は対応スペックページのロット・納期一覧を、よくある疑問はよくある質問ページをご覧ください。試作は1個から、最短3営業日〜で対応できる場合があります。

図面提出から納品までの流れ

図面・データをいただいてからの流れは次のとおりです。データの状態によって最初のステップが変わるだけで、以降は共通です。

図面・データ受領 → 内容確認(材質・板厚・寸法・公差)→ 見積り回答 → 加工用データ作成(溶け代補正・つなぎ設計)→ 版下(フォトマスク)作成 → エッチング加工 → 検査 → 納品

ポイントは2つあります。第一に、内容確認の往復が発生するかどうかは図面の記載次第です。前述の4つの記載事項が揃っていれば、受領から見積り回答までが最短で進みます。

第二に、加工用データと版下はリピート発注時に再利用できます。初回にデータを整備しておけば、2回目以降は「前回と同じで◯枚」という依頼だけで短納期の製作が可能です。設計変更がある場合も、変更箇所だけ伝えていただければデータを更新して対応します。

エッチング図面に関するよくあるご質問

Q1. 3Dデータしかないのですが依頼できますか?

可能です。エッチングは2次元加工のため、3Dモデルから平面形状(展開形状)を確認して見積りします。曲げ加工を伴う場合は、展開図の作成もあわせてご相談ください。(一部受け入れ不可の場合もあります。)

Q2. 紙図面のコピーやFAXでも見積りできますか?

寸法・板厚・材質が読み取れれば見積り可能です。加工用データはこちらで作成します。不鮮明な箇所は確認の連絡をしますので、連絡先を添えてお送りください。

Q3. 図面の縮尺が等倍かわからない場合は?

代表寸法(外形の縦横など)を1〜2箇所実測して書き添えてください。データの縮尺と実寸の対応が取れれば、こちらで等倍に補正できます。

Q4. 公差を指定しないとどうなりますか?

一般公差で製作します。一般公差の基準は板厚・材質により異なるため、見積り時にご案内します。かん合や位置決めに使う寸法など、機能上重要な箇所は個別に公差を指定してください。

Q5. 版下データ(フォトマスク)は自分で用意する必要がありますか?

不要です。いただいた図面・データをもとに、溶け代補正を加えた版下データを加工側で作成します。リピート品はデータを保管するため、2回目以降は短納期で対応できます。

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